前回の記事で、「Webアプリ開発は『建築』のようなもの」とお話ししました。
でも、現実の建築とプログラミングには、たった一つだけ決定的な違いがあります。
現実の建築現場で、大事な柱を切りすぎたり、壁を間違えて壊してしまったらどうなるでしょうか?
その材料はゴミになり、新しい資材を買い直し、一からやり直しです。時間もお金も無駄になります。
しかし、プログラミングの世界には「失敗しても、時間を巻き戻せる魔法」が存在します。それが、今日紹介する Git(ギット) です。
今回は、難しいコマンド(黒い画面)を使わずに、この「ありえないほど便利な道具」を VS Codeだけで 使いこなす方法を解説します。
1. そもそもGitとGitHubって何?
初心者がまず混乱するのが「GitとGitHubの違い」です。これも建築(家づくり)に例えるとスッキリ理解できます。
🛠️ 建築現場で例えるGitとGitHub
- Git(ギット)= 現場専用の「タイムマシン」
手元のパソコン(現場)で「工事の記録」を保存するツール。「柱を切る前」にセーブしておけば、失敗してもボタン一つで時間を戻せます。 - GitHub(ギットハブ)= 設計図と資材の「巨大クラウド倉庫」
Gitで記録したデータをネット上に保存してくれる場所。パソコンが壊れても、GitHubに設計図があれば新しいPCですぐに工事を再開できます。
どれくらい使われているの?
結論から言うと、世界標準です。
Google、Microsoft、Metaなどの巨大企業から個人の趣味開発まで、世界中のエンジニアの90%以上が使用しています。これを使えることは、エンジニアとしての「共通言語」を持っていることと同じです。
2. なぜ使うの?「タイムマシン」以外のすごい機能
「ただのバックアップならDropboxやGoogleドライブで良くない?」と思うかもしれません。しかし、GitHubには個人開発を加速させる強力な連携機能があります。
- 世界への公開ボタンになる(Vercel連携):
これが最強のメリットです。「GitHub(倉庫)に最新の設計図を送ると、自動的にWebサイトが更新される」という仕組みが作れます。面倒なサーバーへのアップロード作業は不要です。 - 拡張機能との連携(Marketplace):
GitHubにはアプリストアのようなものがあり、コードのミスを自動チェックするロボットや、タスク管理ツールなどを導入できます。
3. 【実践】VS CodeからGit/GitHubを使う手順
ここからは実践です。黒い画面(ターミナル)でコマンドを打つ必要はありません。npx create-next-app でプロジェクトを作成した直後からスタートします。
Step 1: GitHubで「倉庫(リポジトリ)」を作る
- GitHubにログインし、右上の「+」アイコンから「New repository」をクリック。
- Repository nameにプロジェクト名(例:
my-first-app)を入力。 - 超重要:PublicかPrivateか選ぶ
初心者は必ず「Private(非公開)」を選んでください。万が一、パスワードなどを書き込んでしまっても、流出事故を防げます。 - 「Create repository」ボタンをクリック。
Step 2: VS Codeで「記録(コミット)」する
- VS Code左側のメニューから「ソース管理(枝分かれのようなアイコン)」をクリック。
- メッセージ欄に「何の工事をしたか」を入力します(例:
first commitやボタンのデザイン修正など)。 - 「コミット」ボタン(またはチェックマーク ✅)をクリック。
※「変更をステージしますか?」と聞かれたら「はい(Always)」を選んでください。
Step 3: GitHubへ「配送(プッシュ)」する
- VS Codeのソース管理パネルにある「ブランチを発行(Publish Branch)」ボタンをクリック。
※または、上部メニュー「…」→「リモート」→「リモートの追加」を選択し、先ほどGitHubで作ったリポジトリのURLを入力。 - 認証を求められたら、GitHubのアカウントでログイン・許可します。
これで完了です!GitHubのページをリロードすると、あなたのコードが保存されているはずです。
4. これだけは守って!初心者がハマる「罠」と注意事項
Gitは魔法の道具ですが、使い方を間違えるとトラブルになります。特に以下の「除外ファイル(.gitignore)」と「秘密鍵(.env)」の関係だけは、今日ここで覚えて帰ってください。
⚠️ 重要コラム:.gitignore(ギット・イグノア)とは?
プロジェクトの中には「GitHub(倉庫)に送ってはいけないゴミや危険物」があります。それらを指定して、Gitに「これらは無視してね」と伝えるリストが .gitignore ファイルです。
代表的な除外ルール:
- node_modules/
→ ネットからインストールした巨大なライブラリ群。重すぎるので送りません。(npm installで復元できるため) - .env*
→ パスワードなどが書かれた秘密ファイル。絶対に送ってはいけません。 - .next/
→ 開発中に作られる一時ファイル。
💡 他の言語での書き方例(参考):
Next.js以外でも、Gitを使うときは必ずその言語用のルールを書きます。
- Flutterの場合:
build/(ビルド成果物)、.dart_tool/など - Pythonの場合:
__pycache__/(キャッシュ)、venv/(仮想環境)など - Macユーザーの場合:
.DS_Store(フォルダ設定ファイル)
Q. .envがちゃんと除外されているか不安です。どう確認すればいい?
APIキーなどを記述した .env ファイルが、誤ってGitHubにアップロードされると大事故になります。以下の方法で必ずチェックしてください。
✅ VS Codeのエクスプローラーを見るだけ!
VS Codeの左側のファイル一覧を見てください。.gitignore に正しく登録されているファイル(.envなど)は、ファイル名が「灰色(グレー)」に薄くなっているはずです。
これが「Gitから無視されている(=安全)」という合図です。
もし色が薄くなっていなければ、.gitignore の記述が間違っています。すぐに確認してください。
まとめ:Gitは「挑戦」を支える保険
「失敗したら戻せばいい」。この安心感こそが、個人開発を加速させる最大の武器です。
道具の準備は整いました。次回はいよいよ、Gitと連携して作ったアプリを世界中に公開する「Vercelへのデプロイ(公開)手順」に進みましょう。
👉 次のステップ:[次回記事:デプロイとセキュリティ。作ったアプリを世界に公開する手順]